サンクコスト効果(sunk cost effect/埋没費用効果)とは、すでに回収できないお金・時間・労力を使ったことが、その後も続けるかどうかの判断に影響する傾向です。経済学では、回収不能な過去の費用は、これからの選択の費用対効果とは分けて考えるべきだとされます。
ただし、継続が常に誤りということではありません。今後の利益が費用を上回るなら続ける理由があります。大切なのは、過去に使った分ではなく、これから得られる価値と必要な資源を比べることです。
1. 思わず納得?日常の「サンクコスト効果」あるある
- 面白くないと感じた映画や本を、料金を払ったからと最後まで続ける。
- 利用頻度の低いサービスを、これまでの支払いを惜しんで解約しない。
- 期待通りに進まない企画に、すでに使った予算を理由に追加の資源を投入する。
- 続けることで得られるものより、過去に費やした時間を惜しんで活動をやめにくくなる。
実際の判断には、途中でやめる費用、契約条件、今後改善する見通し、人間関係なども関わります。過去の投資だけで続けているかどうかを分けて考える必要があります。
2. どちらの旅行を選びますか?(有名な心理実験)
ArkesとBlumer(1985)は、二つの払い戻し不可のスキー旅行の日程が重なり、安い旅行のほうが楽しめると分かっている場面を参加者に提示しました。両方の料金はすでに戻らないため、これからの楽しさだけを基準にすれば、安い旅行を選ぶ理由があります。
それでも参加者の一部は、高額な旅行を選びました。この結果は、回収できない過去の支出が、その後の選択に入り込むことがあることを示します。後のメタ分析では、金銭的なサンクコスト効果の存在が支持される一方、状況や個人差によって大きさが変わることも報告されています。
3. なぜ続けにくくなるのか(考え方)
過去の投資を無駄にしたくない気持ち、途中でやめたときの後悔、以前の判断を正当化したい気持ちなどが関わると考えられます。損失回避や認知的不協和と関係することがありますが、どれか一つですべてを説明できるわけではありません。
金銭と時間のサンクコストが同じように働くとは限りません。近年の登録報告による追試・拡張研究も、時間と金銭で結果が一貫しない場合があると報告しています。
判断するときの確認
- 今日から新たに始めるとしたら、同じ活動を選ぶか考える。
- すでに回収できない費用と、これから必要な費用を分けて書き出す。
- 続ける・やめる以外に、縮小・試行・期限設定といった選択肢がないか検討する。
4. 併せて知っておきたい関連理論
現状維持バイアス
変化を避けて現在の状態を維持しやすい傾向です。サンクコストとは異なり、過去の投資がなくても起こります。
エスカレーション
うまくいかない方針に追加投資を続ける現象です。組織的な意思決定も含めて扱います。
損失回避
損失を利得より重く評価しやすい傾向です。サンクコスト効果の一つの説明として検討されます。
選択支持バイアス
自分が選んだものを、後からより良く評価しやすい傾向です。過去の判断の見直しに関わる場面があります。
5. 学術的根拠・出典
- Arkes, H. R., & Blumer, C. (1985). The psychology of sunk cost. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 35(1), 124–140. https://doi.org/10.1016/0749-5978(85)90049-4
- Staw, B. M. (1976). Knee-deep in the big muddy: A study of escalating commitment to a chosen course of action. Organizational Behavior and Human Performance, 16(1), 27–44. https://doi.org/10.1016/0030-5073(76)90005-2
- Roth, S., Robbert, T., & Straus, L. (2015). On the sunk-cost effect in economic decision-making: A meta-analytic review. Business Research, 8, 99–138. https://doi.org/10.1007/s40685-014-0014-8
- Harris, A. J. L., et al. (2023). Sunk cost effects for time versus money: Replication and extensions registered report of Soman (2001). International Review of Social Psychology, 36(1). https://doi.org/10.5334/irsp.883