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なぜ転職したばかりなのに、「もう辞めたい」と思ってしまうのか?

転職したばかりなのに、「もう辞めたい」「転職を失敗したかもしれない」と思うことがあります。仕事の進め方が分からない、誰に質問すればいいか迷う、前なら普通にできていたことまでできない。すると、「自分はこの会社に合っていないのでは」と考えやすくなります。しかし、入社直後は仕事だけでなく、人間関係や社内ルールも覚えている途中です。この記事では、なぜ転職直後ほど「もう辞めたい」と感じやすいのかを行動科学から解説し、適応途中のつまずきと、本当に職場が合っていないサインを分ける方法を紹介します。

目次

1. 転職してまだ間もないのに、もう会社へ行くのがつらい

匿名希望

新しい会社に入って3か月ですが、もうやめたいです。

転職して新しい会社に入ったばかりです。前の会社を辞めたこと自体は後悔していませんし、入社前に聞いていた仕事内容や条件も大きく違ってはいません。でも、実際に働き始めてから毎日かなりしんどいです。
社内のシステムも仕事の進め方も分からず、何かするたびに誰かへ確認しないと進められません。周りは普通に仕事をしているので、自分だけ何もできていないような気がします。「中途採用なのにこんなことも分からないと思われているのでは」「試用期間で評価が悪かったらどうしよう」と考え、最近は「入社してすぐこんな状態なら、この転職は失敗だったのでは」「もう辞めた方がいいのでは」と思うようになりました。

2. 転職直後に「もう辞めたい」と感じる3つのパターン

転職直後につらくなる理由は人によって違います。人間関係に入れず不安になる人もいれば、以前のように仕事ができず自信を失う人、分からないことの多さを会社とのミスマッチだと考える人もいます。

このタイプのもやもや

みんな悪い人ではないと思います。でも、すでに出来上がっている人間関係の中に入っていくのが難しいです。昼休みも誰と過ごせばいいのか分かりませんし、仕事で困ったときも誰に聞けばいいのか迷います。周りは普通に会話しているのに、自分にはまだそういう相手がいません。この会社でずっと一人のままだったらどうしようと思うと、ここで働き続けるのが急に怖くなります。 まだ入ったばかりですが、早いうちに辞めた方がいいのかもしれないと思っています。

ここで起きている構造:わかりやすさの罠

人タイプは、まだ人間関係ができていないことを「この会社に馴染めない」と考えます。大物タイプは、まだ仕事を覚えていないことを「この会社では通用しない」と考えます。理屈タイプは、まだ社内情報を持っていないことを「会社との相性が悪い」と考えます。3人とも、入社直後に起きている複数の問題を、「この転職は失敗だった」という一つの結論にまとめています。

新しい職場では、仕事内容だけでなく、社内用語、システム、暗黙のルール、質問先、人との距離感、自分に期待されている役割まで一から覚えます。そのため、経験のある人でも一時的に「分からない」「できない」「馴染めない」が増えます。

しかし、それぞれ原因の違う問題を一つずつ見ず、「自分には合っていない」「転職を失敗した」とまとめれば判断は簡単になります。複雑な問題を、分かりやすい説明や単純な原因だけで処理してしまう構造が「わかりやすさの罠」です。 入社直後の「まだ」が、転職全体の「失敗」に変わってしまいます。

もちろん、本当に職場が合っていない場合もあります。聞いていた労働条件と違う、ハラスメントがある、説明もないまま過大な責任を負わされるなど、時間では解決しない問題もあります。「今つらい」という事実から、すぐ「転職失敗」という結論まで進まないことが大切です。

データで見る:新しい職場への適応には、「仕事ができる」以外の要素もある

Bauerら(2007)は、新しく組織に入った人を扱った70の独立したサンプルを統合して分析しました。新人の適応は、自分の役割が分かること、自分なら仕事をこなせるという感覚、職場で受け入れられている感覚から捉えられ、それらは仕事満足度や組織へのコミットメント、仕事の成果、離職などと関係していました。新しい職場でうまく働けない感覚は、能力だけでなく、役割理解や人間関係がまだ形成途中であることとも関係します。

Cooper-ThomasとAnderson(2005)は、2つの組織へ入った222人の新人を追跡し、入社後の学習や仕事満足度、離職意向などを調べました。その結果、新しい組織について学習が進むことと、その後の態度の改善が関連していました。「しばらく我慢すれば必ず慣れる」という意味ではありませんが、入社直後は情報や経験が増えている途中の状態でもあると考える材料になります。

3. 行動科学で解説:なぜ転職したばかりなのに「もう辞めたい」と思うのか

転職しても、これまでの仕事能力そのものが消えるわけではありません。ただ、新しい会社では、資料の場所、判断する人、確認の仕方、期待されるスピードなど、会社固有の情報をまだ持っていません。そのため、以前なら簡単だった仕事にも時間がかかります。

ところが、「社会人経験がある」「中途採用された」という認識があるほど、分からないことが続くと、「まだ情報が足りない」ではなく「自分は仕事ができない」「この会社に合っていない」と意味づけやすくなります。 さらに質問まで控えれば、必要な情報が入らず、本当に仕事が進まなくなります。

3つの理論で詳しく見る ▼

コア理論:自己効力感 → 意味誤認:「まだできない」を「自分にはできない」と判断する

自己効力感とは、「自分ならこの行動をうまくできる」という感覚です。前の会社では仕事の進め方や周囲の人を知っていたため、自然に判断できることも、新しい会社では必要な情報が足りず簡単にはできません。

そこでミスや質問が増えると、「まだ会社を知らないからできない」という状態を、「自分はこの会社では仕事ができない」と受け取りやすくなります。適応途中の一時的なできなさを、自分の能力や会社との相性の問題として解釈する。これが、この場面での意味誤認です。

サブ理論:心理的安全性 → 安全欠如:「こんなことを聞いたら評価が下がる」と質問できなくなる

心理的安全性とは、質問したり、失敗を認めたり、助けを求めたりしても、対人関係上の大きな不利益を受けないと思える状態です。転職直後は、本来なら質問しながら職場の情報を増やす必要があります。

しかし、「中途採用なのにこんなことも知らないと思われたくない」と感じれば、必要な質問まで控えるようになります。分からないから聞く必要があるのに、評価が怖くて聞けない。これが、この場面での安全欠如です。

補助理論:ネガティビティバイアス → フィードバック暴走:できなかった場面ばかりが「転職失敗」の証拠になる

ネガティビティバイアスとは、良かった出来事よりも、失敗や不安などのネガティブな情報へ注意が向きやすい傾向です。入社直後は、「質問してしまった」「説明を理解できなかった」「会話に入れなかった」といった場面が印象に残りやすくなります。

すると自信が下がり、さらに質問や確認をためらいます。必要な情報が得られず、またうまくできない場面が増える。できなかった経験が次の行動を縮め、その結果さらにできない経験が増える。これが、この場面でのフィードバック暴走です。

構造の固定化:できないと思うほど聞けなくなり、聞けないほど「転職失敗」に見えてくる

転職直後は会社の情報が足りないため、質問や確認が必要です。しかし仕事がうまく進まない経験が続くと、「自分はこの会社で通用しない」と感じ、評価を下げたくない気持ちから質問しにくくなります。

まだ分からない → 仕事がうまくできない → 自分には無理だと感じる → 質問しにくくなる → 情報が入らない → さらにできない → 「この転職は失敗だった」とまとめる。 こうして、適応途中の問題が一つの大きな結論へ固定されていきます。

4. この構造をほどくには:適応途中の問題と、この会社に残るべきでない問題を分ける

よくある方法論の間違い

よくある失敗:「転職したばかりなんだから、3か月くらい我慢する」

入社直後につらいと、「最初は誰でも大変だから、しばらく我慢した方がいい」と考えがちです。しかし、時間を置けば変わる問題と、時間では解消しない問題は別です。仕事をまだ知らないことと、聞いていた労働条件が違うことを同じ「慣れの問題」にすれば、本当に離れた方がいい環境まで我慢することになります。必要なのは期間ではなく、今つらい原因で判断することです。

理不尽構造攻略のヒント

攻略のヒント:「できない」ではなく、何がまだ足りていないのかを見る

「この仕事ができない」とまとめると、自分の能力の問題に見えます。そこで、分からない社内ルールなのか、未経験の業務なのか、質問先が不明なのか、指示そのものが曖昧なのかを確認します。情報や経験が増えれば変わる問題なのか、それとも変わらない条件・環境の問題なのかを分けることが重要です。

攻略1【分解】「まだ知らない」「まだできない」「会社側の問題」を分ける

今困っていることを三つに分けます。社内ルールや担当者などまだ知らないこと、経験すれば改善する可能性があるまだできないこと、そして説明と違う条件や過度な放置など会社側にある問題です。

たとえば「申請方法が分からない」と「教育すると言われたのに誰にも質問できない」では、原因が違います。全部を「転職失敗」にまとめず、原因ごとに扱うことが最初の一歩です。

攻略2【外部基準】自分の感覚だけでなく、会社から見た現在地を確認する

入社直後は、自分がどの程度できていれば十分なのかも分かりません。上司や教育担当者に「現時点ではどこまでできていればいいですか」「まず何を覚えるべきですか」と確認します。

自分では遅れていると思っていても、会社側は習得途中だと考えているかもしれません。逆に、説明もなく即戦力だけを求められているなら、それも判断材料です。自分の不安だけで採点せず、実際に期待されている現在地を確認します。

攻略3【小さく試す】「この会社で続けられるか」ではなく、一つの詰まりが変わるかを見る

「この会社で何年も働けるか」ではなく、今一番困っていることを一つだけ選びます。質問相手が分からないなら、誰に相談・質問すればいいか一人確認する。業務手順が曖昧なら、一度整理して確認する。その程度から試します。

それで状況が変わるなら、適応途中だった可能性があります。何を確認しても説明されない、助けを求めても放置されるなら、「慣れれば解決する」と考え続ける必要もありません。続けるか辞めるかより先に、今の問題が動くものなのかを確かめます。

5. まず10分でできること

今「もう辞めたい」と感じる理由を3つ書き、それぞれに「まだ知らない」「まだできない」「会社側の問題」のどれかを付けてください。

「まだ知らない」なら誰へ何を聞くか、「まだできない」なら何を経験すれば変わりそうかを考えます。「会社側の問題」は、慣れる対象にはせず事実として残します。今すぐ転職の成否を決めるより、現在のつらさを一つの「失敗」にまとめないことが大切です。

6. まとめ:入社直後の「まだ」を、転職全体の「失敗」にしない

転職直後は、仕事だけでなく、社内ルール、人間関係、自分の役割まで一度に学び直すため、「分からない」「できない」「馴染めない」が同時に起こりやすくなります。それをまとめて「転職失敗」と判断する前に、「まだ知らない」「まだできない」「会社側の問題」を分け、情報や経験が増えれば変わるのか、環境そのものを見直すべきなのかを確認する。 明らかな問題まで我慢する必要はありませんが、適応途中の自分をその会社での完成形として採点する必要もありません。

参考文献

Bauer, T. N., Bodner, T., Erdogan, B., Truxillo, D. M., & Tucker, J. S. (2007). Newcomer Adjustment During Organizational Socialization: A Meta-Analytic Review of Antecedents, Outcomes, and Methods. Journal of Applied Psychology, 92(3), 707–721.
https://doi.org/10.1037/0021-9010.92.3.707

Cooper-Thomas, H. D., & Anderson, N. (2005). Organizational Socialization: A Field Study into Socialization Success and Rate. International Journal of Selection and Assessment, 13(2), 116–128.
https://doi.org/10.1111/j.0965-075X.2005.00306.x

Bandura, A. (1977). Self-Efficacy: Toward a Unifying Theory of Behavioral Change. Psychological Review, 84(2), 191–215.
https://doi.org/10.1037/0033-295X.84.2.191

Edmondson, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
https://doi.org/10.2307/2666999

Rozin, P., & Royzman, E. B. (2001). Negativity Bias, Negativity Dominance, and Contagion. Personality and Social Psychology Review, 5(4), 296–320.
https://doi.org/10.1207/S15327957PSPR0504_2

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