Middleton, S., Charnock, A., Forster, S., & Blakey, J.(2018)“Factors affecting individual task prioritisation in a workplace setting.” Future Healthcare Journal, 5(2), 138–142.
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KC, D. S., Staats, B. R., Kouchaki, M., & Gino, F.(2020)“Task Selection and Workload: A Focus on Completing Easy Tasks Hurts Performance.” Management Science, 66(10), 4397–4416.
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Iyengar, S. S., & Lepper, M. R.(2000)“When Choice Is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing?” Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006.
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Simon, H. A.(1955)“A Behavioral Model of Rational Choice.” The Quarterly Journal of Economics, 69(1), 99–118.
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Vohs, K. D., Baumeister, R. F., Schmeichel, B. J., Twenge, J. M., Nelson, N. M., & Tice, D. M.(2008)“Making Choices Impairs Subsequent Self-Control: A Limited-Resource Account of Decision Making, Self-Regulation, and Active Initiative.” Journal of Personality and Social Psychology, 94(5), 883–898.
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なぜ仕事が多すぎると、何から処理すればいいか分からなくなるのか?
やるべき仕事は全部分かっているのに、数が増えると「まず何からやればいいんだ」と決められなくなることがあります。優先順位をつけようとしても、締切、重要度、所要時間、誰が待っているかなどが絡むと、一件終わるたびにまた考え直すことになります。これは単に段取りが苦手だからとは限りません。この記事では、仕事が増えるほど処理順を決めにくくなる仕組みを行動科学から整理し、毎回すべての仕事を見比べなくても進められる状態へ変える具体的な攻略まで解説します。
1. やることは全部分かっているのに、どれから始めればいいか決まらない
仕事が多すぎると、優先順位を考えるだけで時間が過ぎてしまいます。
朝、やることを確認すると、昨日から残っている資料、今日中に返すメール、上司から頼まれた確認、同僚へ返すデータなどが並んでいます。どれもやる必要がある仕事なので、「まず何からやろう」と一覧を見ます。締切が近いものを先にしようと思っても、すぐ終わりそうな仕事も気になりますし、誰かを待たせている仕事もあります。考えているうちに、結局その場で一番気になった仕事から始めることがあります。
一つ終えても、まだ仕事は何件も残っています。するとまた一覧を見て、「次はどれだ」と考えます。仕事そのものをしている時間だけでなく、残っている仕事を見比べ、順番を決め直すことにも時間を使っています。やるべきことが分からないわけでも、優先順位という考え方を知らないわけでもありません。なぜ仕事が多くなるほど、何から処理すればいいのか分からなくなるのでしょうか。
2. 仕事が多すぎて処理順を決められなくなる3つのパターン
仕事が多いとき、何を先にしようとするかは人によって違います。誰かを待たせる仕事が気になる人もいれば、すぐ終わる仕事から片づける人、条件を比べて順番を決めようとする人もいます。ただ、入口は違っても、残っている仕事を何度も見比べながら、その都度「次の一件」を選び直している点は共通しています。
朝一番で資料を進めようと思っていても、メールを見ると昨日問い合わせをくれた人から返信が来ています。「これ返しておいた方がいいよな」と思って開くと、その横には同僚から確認を頼まれていたデータもあります。そちらも「待ってるかもしれない」と気になります。とりあえずメールを返してから資料に戻ろうとしますが、「先にデータも返した方が親切か」とまた迷います。どちらを先にしても、まだ待たせている誰かが頭に残ります。やることが増えるほど、気になる相手も一緒に増えていきます。
朝の一覧を見ても、「まあ今日は全部いけるやろ」と思います。資料は少し重いですが、メールは何件か短そうですし、確認作業もそこまで時間はかからなさそうです。まず10分で終わりそうなものから片づけて、勢いをつけようとします。二つ、三つと終わるので仕事は進んでいます。ただ、ふと残りを見ると、まだ資料も確認も返信もあります。「次どれいこう」とまた一覧を眺め、今度は別の短そうな仕事に手を伸ばします。仕事は減っているのに、次に何をするかは何度も決め直しています。
最初にちゃんと順番を決めようとします。今日締切の仕事を確認し、重要度も見て、時間がかかりそうなものには先に着手した方がいいと考えます。ところが、締切は明日でも上司が待っている仕事があり、今日中でも10分で終わるものもあります。「締切だけで決めるのも違う」「他人を止める仕事は先にした方がいい」「でも時間のかかる仕事こそ早めに始めたい」と考えているうちに、一覧を何度も見直します。どの考え方も間違っているようには見えないため、考えるほど一つに決めにくくなっていきます。
ここで起きている構造:選択麻痺
3タイプとも、仕事が多いから単純に作業時間が足りなくなっているだけではありません。次に何をするか決めるためには、残っている仕事を候補として並べ、締切や重要度、所要時間、相手への影響などを見比べる必要があります。仕事が増えるほど、「やるべき仕事」が増えるだけでなく、その中から一件を選ぶために比較しなければならない対象まで増えていきます。
しかも、一つの仕事を見ただけでは順番は決まりません。「これは今日中」「でもこちらは上司が待っている」「こっちは10分で終わる」と別の仕事を見るたびに判断が揺れます。その結果、仕事は一覧になっていても、今やる一件まで十分に絞り込めません。選択肢や判断材料が増えすぎて、仕事を始める前の「選ぶ段階」で動けなくなる。これが、ここでいう選択麻痺です。
補足:仕事の処理順は、重要度だけで決まっているわけではない
職場でのタスク優先順位について先行研究を整理した2018年のレビューでは、20本の研究を検討し、人が仕事の順番を決めるときには、重要度だけでなく、緊急度、所要時間、得られる報酬など複数の要因が影響することが整理されています。つまり、仕事の処理順は「重要度」だけで決まるものではなく、複数の条件を同時に見ながら決められていることが分かります。仕事が増えれば、この記事で見てきたように、その異なる条件を持つ仕事同士を比較する対象も増えていきます。
さらに2020年に『Management Science』へ掲載された研究では、救急部門の6年分のデータを分析したところ、仕事量が多い状況では、医師が比較的処理しやすい患者・ケースを選びやすくなる傾向が確認されました。実験でもこの傾向が再現され、疲労だけでなく「一つ終えた」という進捗感も、簡単なケースを選ぶことに関係していました。
救急医療の結果をそのまま一般の会社員へ当てはめることはできません。ただ、仕事が増えたときの処理順は、重要度だけで決まるとは限らず、「早く終えられるか」「一件減らせるか」といった別の条件にも影響されうることを示す研究です。
3. 行動科学で解説:なぜ仕事が増えると、処理順まで分からなくなるのか?
仕事が数件だけなら、「締切が一番近いもの」「相手を待たせているもの」のように、比較する対象も限られています。しかし仕事が増えると、それぞれに締切、重要度、所要時間、依頼者、他の仕事とのつながりがあります。新しい仕事が一件増えるたびに、作業が一件増えるだけではなく、どれを先にするかを判断する材料まで増えていきます。
そのため、仕事量が多い状態では「優先順位をつければいい」と分かっていても、その優先順位を作ること自体が一つの負荷になります。しかも一件を終えるたびに残った仕事をもう一度見比べれば、同じ判断を何度も繰り返すことになります。問題は優先順位の考え方を知らないことではなく、選ぶ対象と判断材料が増えすぎて、処理順を作るための判断そのものが重くなることです。
3つの理論で詳しく見る
コア理論:選択過多効果 ― 候補が増えるほど、次の一件を選びにくくなる|選択迷子
選択過多効果とは、選択肢が増えれば必ず選びやすくなるわけではなく、候補が多すぎることで比較や決定が難しくなる現象です。選べるものが少なければ違いを見比べやすくても、候補が増えるほど「本当にこれでいいのか」と別の選択肢まで確認する必要が出てきます。選択肢を限定した場合の方が、非常に多い選択肢を提示された場合より選択や行動につながりやすかったことを示す実験研究もあります。
仕事でも同じように、やることが3件なら「まずこれ」と決められていた人でも、10件、15件と並ぶと簡単には決められなくなります。しかも仕事には締切や重要度など複数の条件があるため、単純に一列へ並べられるとは限りません。仕事が多いことで「選ぶ候補」そのものが増え、次の一件を確定できなくなる。これが、この記事における選択迷子です。
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サブ理論:限定合理性 ― すべての仕事を同時に比較して「最適な順番」を作ることには限界がある|情報過負荷
限定合理性とは、人には扱える情報や時間、認知能力に限界があり、すべての条件を完全に把握したうえで最適な判断をすることは難しいという考え方です。情報が増えるほど人が合理的でなくなるというより、完全な比較に必要な処理量が人の能力を超えていきます。
仕事が多いときも、「締切」「重要度」「何分かかるか」「誰が待っているか」「どの仕事が次工程を止めているか」まで全部見れば、より正確な順番を作れそうに思えます。しかし対象が増えるほど、確認しなければならない情報も増えます。全部を頭の中へ載せて正しい順番を作ろうとするほど、処理・比較する情報そのものに押されて判断できなくなる。これが、ここでの情報過負荷です。
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補助理論:意思決定疲労 ― 選び直すほど、「すぐ終わる仕事」が魅力的になる|バグ:即時偏重
意思決定疲労とは、判断や選択を何度も繰り返すことで、後になるほど判断に使える余力が減りやすくなることを説明する考え方です。重要なのは、大きな決断だけが判断ではないことです。「次にどれをするか」「これは今か後か」といった小さな選択でも、それが一日の中で何度も続けば判断は積み重なります。選択を繰り返した後に、その後の自己統制や粘り強さが低下したとする実験研究もあります。
仕事が多い人は、一件終えるたびに残りの仕事を見て、また次を決めます。何度も比較するうちに、重い重要案件を改めて検討するより、「10分で終わる」「これをやれば一件消える」といった、すぐに終わった感覚を得られる仕事へ流れやすくなります。重い仕事を選ぶより、目の前の判断と負担を早く終わらせられる仕事を選ぶことで、その場では少し楽になります。こうして、本来の重要度より目先の完了や安心が優先される状態が、ここでの即時偏重です。
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構造の固定化:仕事を一つ減らすたびに、残り全部をまた選び直す
仕事が多い状態で「まず何からやろう」と全件を見比べると、その時点で一度判断が発生します。一件を選んで終えても、残りの仕事には明確な順番がついていないため、次にまた一覧を見て比較します。そこで新しい依頼や締切の変化があれば、さっき考えた順番も使えなくなり、もう一度判断することになります。
仕事が増える → 全部を候補として見る → 締切・重要度・時間・相手などを比較する → 一件だけ選ぶ → 残りは順番が決まらないまま残る → 一件終える → また残り全部を比較する → 判断するほど疲れる → すぐ終わって一件減らせる仕事へ流れる → 本当に処理すべき順番がさらに見えにくくなる。
こうして、仕事をこなしているのに「次に何をするか」という判断だけが何度も復活します。仕事が多すぎると何から処理すればいいか分からなくなるのは、優先順位を知らないからではありません。大量の仕事をすべて「次にやる候補」として残したまま、その都度一件を選ぼうとすることで、選ぶ作業そのものが終わらなくなるからです。
4. この構造をほどくには:毎回「全件から次の一件を選ぶ」のをやめる
よくある失敗:仕事が増えるほど、優先順位をもっと丁寧に考えようとする
仕事が多すぎて何から処理すればいいか分からなくなると、「もっとちゃんと優先順位をつけよう」と考えがちです。締切、重要度、所要時間、依頼者、他の仕事への影響まで確認して、その時点で最も優先すべき一件を選ぼうとします。しかし、この記事で起きていたのは優先順位の考え方を知らないことではなく、大量の仕事がすべて「次にやる候補」として残り、一件終わるたびに全件を比較し直していることです。比較を丁寧にするほど判断材料まで増え、かえって選択に使う時間と負担が大きくなります。
攻略のヒント:正しい一件を選び続けるのではなく、「今選ぶ必要がある仕事」を減らす
変えるべきなのは、優先順位の付け方そのものより、毎回すべての仕事を選択肢へ戻している状態です。全件を保管する場所と今から実行する仕事を分け、新しい仕事が来てもすぐ同じ列へ混ぜず、自分で処理できない量だけは上位の業務配分へ戻す。こうして一度に比較する候補と選び直す回数を減らせば、「仕事が増える→何度も全件から選ぶ」という選択麻痺の流れそのものを止められます。
攻略1【選択削減】:全件から選ぶのをやめて、「今やる候補」を3件までにする
朝や仕事の区切りで一度だけ全件を確認し、これから処理する2〜3件だけを別の「実行列」へ移します。全体の一覧に15件あっても、「資料A→データ確認→メール返信」の3件だけを今の候補にし、それ以外は消すのではなく、いったん選択肢の外へ置きます。
資料Aが終わっても全件一覧には戻らず、そのままデータ確認へ進みます。2〜3件を処理したところで初めて全件を見直し、次の実行列を作ります。これまでの「全件を見る→一件選ぶ→また全件を見る」から、「全件を見る→数件だけ選ぶ→順番に処理する」へ変えることで、仕事自体が減らなくても、その瞬間に選ばなければならない候補を減らせます。
攻略2【ルール化】:割り込み条件を決め、できれば「割り込み処理の時間」を別にする
実行列を3件に絞っても、新しいメールや依頼が来るたびに「こっちを先にした方がいいか」と考えれば、また選択肢が増えてしまいます。そこで、「今日中に対応しないと業務が止まる」「他の人の作業を止めている」など、今の実行列へ割り込ませる条件を先に決めます。「上司から来た」「通知が来た」「気になる」というだけでは、その場で並べ替えません。
さらに可能なら、返信や軽い確認は11時や15時などの「割り込み処理の時間」へまとめます。新しい仕事を既存の仕事とその都度混ぜるのではなく、いったん別レーンへ置くことで、「仕事が一件増える→全体の優先順位を考え直す」という再発を防ぎます。ただし、すぐ対応するよう明確に指示された仕事まで後回しにする必要はありません。
攻略3【外部基準】:処理能力を超えた分は、可能なら上司に優先順位を決めてもらう
ここは職場によってできる範囲が違いますが、明らかに全部を期限内に処理できない量なら、自分一人で「どれを後回しにするか」まで抱え込まない方法もあります。たとえば、「A・B・Cがありますが、この時間内では2件までです。どれを優先しますか」と伝え、仕事の優先順位を決める権限がある上司へ判断を戻します。
これは単に「上司に相談しましょう」という話ではありません。処理不能な量なのに、担当者がさらに「どれを落とすか」という判断まで背負えば、その判断自体が新しい負担になります。可能な会社であれば、「仕事が多い→自分がもっと上手に選ぶ」ではなく、「実行可能な量を示す→超えた分の優先順位は業務配分の問題として上へ返す」ことで、個人の選択迷子をより大きな仕事配分の流れへ戻せます。
5. まず10分でできること:明日の「今やる3件」を先に作る
まず、今抱えている仕事を一度だけ一覧で確認してください。そこで全部をきれいに並べ替えようとせず、明日最初に処理する2〜3件だけを別の場所へ抜き出します。紙でもメモアプリでも構いません。
抜き出したら、その3件には順番までつけておきます。明日一件目が終わっても元の全件一覧へ戻らず、そのまま二件目へ進みます。新しい依頼が来ても、すぐ対応する必要がなければ、いったん元の一覧側へ置いておきます。
まず試すのは一日全部の完璧な管理ではありません。「一件終わるたびに全件から次を選ぶ」を、最初の3件だけでもやめてみることです。それだけでも、仕事をする時間とは別に発生していた「次はどれだ」と考える回数を減らせます。
6. まとめ:仕事が多いほど、「仕事」だけでなく「選択」まで増えている
仕事が多すぎると何から処理すればいいか分からなくなるのは、優先順位をつける能力がないからではありません。仕事が増えるほど候補と判断材料が増え、一件終えるたびに残り全部を再び比較すれば、「次の一件を選ぶ」という仕事まで何度も発生します。だから必要なのは、毎回もっと上手に優先順位を考えることではなく、今やる候補を数件に絞り、新しい仕事をその都度混ぜず、処理能力を超えた判断は可能なら権限のある側へ戻すことです。変えるべきなのは仕事が多いことだけではなく、すべての仕事が何度でも「次にやる候補」へ戻ってくる状態です。
参考文献
Middleton, S., Charnock, A., Forster, S., & Blakey, J.(2018)“Factors affecting individual task prioritisation in a workplace setting.” Future Healthcare Journal, 5(2), 138–142.
論文ページ
KC, D. S., Staats, B. R., Kouchaki, M., & Gino, F.(2020)“Task Selection and Workload: A Focus on Completing Easy Tasks Hurts Performance.” Management Science, 66(10), 4397–4416.
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Iyengar, S. S., & Lepper, M. R.(2000)“When Choice Is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing?” Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006.
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Vohs, K. D., Baumeister, R. F., Schmeichel, B. J., Twenge, J. M., Nelson, N. M., & Tice, D. M.(2008)“Making Choices Impairs Subsequent Self-Control: A Limited-Resource Account of Decision Making, Self-Regulation, and Active Initiative.” Journal of Personality and Social Psychology, 94(5), 883–898.
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